研究概要 |
M配列を符号化開口へ応用することと, これにより深さの異なる断層像の再構成が可能であることを, 計算機シミュレーションと放射性同位元素(RI)ファントムを用いた実験により確かめた. また, 深さ方向の分解能の低いことを改善するための方式を考案し, シミュレーションと実験によりその有効性を確かめた. 今年度は, 立体的ファントムを対象とする研究を主体とした. そのため, アクリル樹脂を用いて立体形状(円筒と直方体を組合せ, 深さにより断面が円や矩形となる)を作成し, その中に放射性同位元素テクネチュウム(Tc)を注入して, ファントムとした. M配列は昨年度と同様, 厚さ3mmの鉛板に直径2mmの穴を8次のM系列に従って, 17×15のアレイ状に並べて作成したものを使用した. 検出器はシンチレーションカメラを用い, 128×128の画素のデータを得た. これを基に, 計算機で処理を行い, 種々の深さでの像再生を行った. 得られた再生像と, 観測条件から求められる点広がり関数の形状に基づいて深さ方向の分解能を検討した. 連続した分布をもつ対象の, ある深さに対する再生像はその前後の像がボケた形で重畳するため, 分解能の悪い像した得られないことが判明した. この欠点を改善するため, 深さ方向に微分した像が得られる差動法を考案した. これは, 投影像を得る段階で, 配列を僅かに奥行き方向にずらして二個の投影像を得, 両者の差の投影像から再生像を求めるものである. 計算機を用いたシミュレーションと, 上述の立体ファントムを用いた実験により, この方法を使用すれば, 分解能の改善された像の得られることが確かめられた.
|