研究概要 |
溶液相や気相から結晶が成長する際, 原子・イオン単位が成長単元になって結晶の成長が行なわれるのか, それとも環境中にはもっと大きなサイズの会合粒子(クラスター)がすでに存在し, それが成長単元の役割を果すのかは, 結晶の成長機構, 結晶の完全性, あるいは結晶のモルフォロジーの理解にとって基本的に重要な課題である. この問題はまた, 溶液構造や錯塩化学と関連した問題でもある. 結晶成長に関する従来の理論はすべて原子あるいはイオン単位の成長単元を前提として組みたてられている. 一方, 結晶成長についての実験結果の夛くは, もっと大きなクラスターを成長単元と考える必要性を示唆している. 本研究のねらいは, この点の解明である. そのためにレーザー老による光散乱法(光混合法のうちの光子相関法)により, n.m.サイズの粒径測定を行なう装置を開発した. これは, 市販の大塚電子製レーガー粒径解析システムのうち記録・データ処理部のみを利用し, 独自に開発した原則・測定部とを組みあわせたものである. 空気調節によって温度を制御した水溶液を不飽和→飽和→過飽和状態へと変化させ, この変化に伴なうクラスターサイズ変化を, クラスターのブラウン運動によるドップラー効果に起因するレーリー散乱光のスペクトルとしてとらえ, それを光混合法(光子相関法)によって解析し, 粒径サイズを測定しようとする方法である. 本装置を開発し, 標準試料による検証を行なった上で, 水溶液系での廣糖, およびロッシエル塩溶液を用いて, 不飽和→飽和→過飽和変化に応ずる粒径変化をしらべた. その結果, 両溶液ともで, 粒径10n.m.以下のクラスターの存在が認められ, そのサイズはこの変化に応じて増大する傾向があることがわかった. この方法は, 今後, 溶液系での成長単元を実験的にしらべるのに有効であろうという見透しが, 本研究を通じてたてられた.
|