研究概要 |
中部・東北日本には多数の逆断層が発達する. 本研究はこれらの逆断層に伴う地表変形とその発達過程を明らかにすることを目的にする. 伊那谷西縁, 庄内平野東縁, および駿河トラフ西岸部の3地域を対象に調査を行ない, 以下の結果を得た. 1.伊那谷西縁は大別して東西2列の逆断層で境される. 西側の断層(境界断層と呼ぶ)は, 盆地堆積物と木曽山脈の古期岩類を境する. 東側の断層(前縁断層と呼ぶ)は盆地堆積層内に発達する. 変位地形の解析の結果, 両者は極めて大きな水平短縮成分をもつことがわかった. 重力測定を行ない地下構造を決定することを試みた結果, 境界断層は極めて低角(約10度)であり, これに沿って盆地堆積物が木曽山脈の下に4km以上underthrnstしていることがわかった. また, 前縁断層は, その地下で盆地堆積層基底面がくいちがっていないので, ほぼ, 水平のdetachmentであろう. 以上の結果は, 従来垂直変位速度のみに基づいて評価されてきた内陸逆断層の活動度を, 変位の水平短縮成分を考慮して再評価する必要があることを示している. 2.庄内平野東縁は大規模な褶曲を伴なう変動崖であるが, 断層の存在は未確認であった. トレンチ掘削調査の結果, 低角の逆断層の存在が確認され, 完新世後期の活動の証拠も見つかった. この逆断層帯は, 地表近くに低角の断層面が存在するという点で伊那谷断層帯と共通しているが, 著しい褶曲変形を伴なうという点では対照的である. 3.焼津平野での沖積層掘調査により, プレート境界逆断層上盤側の沈み込み口に近い所で局所的な沈降域が存在することがわかった. この結果は, 沈み込みに伴なう変形がかなり複雑であることを示しており, 駿河トラフ沿いに発生した/する過去/将来の地震の断層モデルを構築する際に重要な拘束を与えるであろう.
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