研究概要 |
自発分極をもつ強誘電性電圧電体では, その分極方向を一定方向にそろえる単分域化により正あるいは負分極面の露出, および弾性表面波(エネルギーが表面付近に集中した波)の発生を行うことができる. 本研究では, 触媒活性な金属あるいは酸化物半導体薄膜を強誘電性圧電体に接合させ, その吸着および触媒機能に及ぼす地下強誘電性電圧電体の(1)分極場による静的効果, および(2)弾性表面波による動的効果を明らかにした. (1)においては, 単分域化したLiNbO_3単結晶の正あるいは負分極面にTiO_2あるいはSnO薄膜を接合した触媒素子を作製した. H_2, CO, CO_2, およびC_2H_4各種気体の吸着による表面電気電導度の変化は, 負分極面に比べ正分極面の場合に著るしく大きく, またその変化の差は吸着気体のイオン化ポテンシャルが高い程大きい. この分極方向効果に対し強誘電性電圧電体との接合により半導体薄膜内に生じた価電子帯および伝導帯の曲りが半導体表面にまで影響する結果吸着特性が変化するモデルを提唱した. この分極場の静的効果によって選択機能をもつ気体検知(センサー)素子へと発展できることを示した. (2)においては, Y-LiNbO_3単結晶の両端にリングラフィー法により表面波発生および受信用のクシ型電極を取付け, さらに中央部に触媒活性体であるpbを薄膜接合した触媒素子を作製した. 地下圧電体基板の弾性表面波の強度は微少量のO_2やH_2の吸着に対しても, きわめて敏感であり高感度吸着量(吸着分子数=10^<14>〜10^<15>)の測定が可能なことを示した. 酸化反応(CO+O_2, H_2+O_2), 分解反応(CH_3OH, CH_3OH+O_2)および水素化反応(C_2H_4E+H_2)の各種触媒反応に対しパワーアンプを組込んだ回路(<10W)を作製し触媒素子印加の弾性表面波効果をしらべ表面波は極性分子を含む反応系において接合pd膜の活性を制御するのに有効であることを明らかにした. 本研究の結果から強誘電性圧電体により新しいデバイス型触媒が得られることが結論された.
|