研究概要 |
本研究では従来原子のハートレーフォック波動関数に対する近似の良さを目安にして基底関数として短縮ガウス型関数が決められてきたことを反省し, 原子の配置間相互作用(CI)法による波動関数が近似良く求まる短縮ガウス型関数を作ることを考えた. ここでは炭素原子の短縮ガウス型関数について検討を加えた. その結果現時点の計算機能力を考慮にいれて比較的大きな分子への応用と云うことを考えると, 〔5s 3p 1d〕の短縮ガウス型基底関数系を用いるのが良い妥協点であるとの結論に達し, まずエチレンの計算に用いてπ→π^*励起状態への励起エネルギーとその状態のキャラクターを適切に記述できることを示した. ベンゼン及びその炭素をボロンと窒素で置換してできる等電子分子ボラジンの電子構造を当研究室で開発した混成自然軌道(CNO)を用いてCI計算を行った. この方法によって両分子ともに精度の高い波動関数を得て, 良い励起エネルギーも得た. ベンゼンにおいてはイオニックな電子配置を持つ励起状態においてはσ電子, π電子間の電子相関が重要であるとの結論を得た. ボラジンの観測されたエネルギーの低い一重項励起状態S1, S2, S3は従来π→π^*遷移によると考えられて来たが根拠の明確なものではなかった. 本研究からはS1とS3をπ→π^*遷移する同定を支持するが, S2はπ→σ^*遷移とする方が良いとの結論を得た. フルオロベンゼンのイオン化ポテンシャルを規模の大きいCI計算によって得た. 得た結果と光電子スペクトルとは大変良く一致する. 更に経験則perflvor効果が破れる場合のあることを指摘した.
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