研究概要 |
フォトフラグメント分光法は分子の光分解で生成するフラグメントの並進回転, 振動エネルギーさらに角度分布を測定し, そこから光分解の初期過程と動力学, 電子励起分子のポテンシャルを研究するものである. 従来は光源の波長の制限による紫外域の光分解のみが対象とされてきた. ところが最近のレーザーの発達により高励起状態の研究が可能となった. 真空紫外レーザーは157nmF_2線発振が弱いためこの波長での一光子分解を断念し二光子分解に主力を注いだ. まず308nmレーザーでNO_2, CS_2分子の光分解を試みた. その結果両者のフォトフラグメントの角度分布に大きな違いのあることが見いだされた. つまりNO_2ではNO_2(X^2A_1)→NO_2(^2B_2)→NO_2(^2A_1)の過程で最終的にはNO(X)+O(^1D)を考える時にNO(X)の角度分布が1+B_2P_3(cosθ)+B_4P_4(cosθ)とあらわせられた. 一方CS_2でも同じ対称性を持つ電子状態を経て分解してゆくにもかかわらずすのS(^3P)フラグメントの角度分布は1+B_2P_2(cosθ)であらわされてきた. P_4(cosθ)項はあらわれてこない. これは中間状態のB_2はNO_2ではdissociativeあり一方CS_2ではboundであることに由来する. この結果寿命の短いdissociative stateは二光子吸収においてqursivirtual stateとしても働くことを示唆するものである. これら以外の実験結果を以下に簡単に述べる. 1)Co_2の多光子分解により親分子イオン解離からCo^+を検出しさらにMET(Multiple Electron Transition)励起に基づくC^+の生成を観測した. これらはそれぞれ19eV, 25eVのエネルギー領域である. 2)CH_3Iの多光子吸収により生成するCH_3I^+の光分解. 3)CH_3ONOの1光子, 2光子分解. 4)SO_2, Sn(CH_3,Sn(CH_3)_4,CdI_2,ZnI_2の一光子分解. 5)SiウェーハーからのSi原子の光剥離過程.
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