研究概要 |
1.分子のハートリ・ホック方程式を数値的に解く試みは, これまで2原子分子に限られていた. その理由は, 楕円座標という特殊な座標系を使っていたからである. 本研究では, 円筒座標という簡単な座標系を導入し, 直線分子一般に適用できる方法を開発した. 微分方程式は有限差分法を用いて数値的に解いていく. 現在, 一電子系と二電子系の方程式を解くプログラムを完成させ, H_2^+, H_2およびH_3^<2+>について, テスト計算を実行することができるようになった. 直線H_3^<2+>系は一電子系ではあるが, 3原子系であり, 本研究の方法が2原子以上にまで適用できることを示している. 2.シュレディンガー方程式の数値解法の研究のひとつとして, 一自由度および2自由度系の分子中の核の運動の方程式を有限要素法によって解く方法を開発した. この研究では, この一, 二年のうちに利用できるようになったスーパーコンピュータの能力を可能な限り使いこなしたアルゴリズムを見出し, プログラムを開発した. 35万次元の国有値問題を2〜3分で解く高速性能を実現した. 3.上記のプログラムを用い, 分子間水素結合中のプロトン移動が, 分子間振動の励起によって, 著しく推進される機構を明らかにした. 普通の意味のトンネル効果に加えて, 古典的な経路も大切になることが, 波動関数を図示することによって明瞭にした. 4.ランチョス漸化式法を改良して, 連続状態と離散状態への遷移を統一的に取り扱う方法を開発した.
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