研究概要 |
芳香族性検証のための非ベンゼン系芳香族化合物のうち, 大環状化合物(アヌレン)についてはすでに多くの成果が得られているが, 本研究では複素芳香環の高級類縁体, 交差共役化合物, 架橋アヌレン類を系統的に合成することによって, 構造と性質の関係について明らかにすることを目的とした. 以下得られた化合物群の性質について列挙する. 1.交差共役化合物 ジシアノフルベン類(I)は大員環部に環電気効果の発現がみられ, (Ia)の様な分極構造の寄与が存在することが判明した. 2.架橋アヌレン類 合成出来た架橋アヌレン類(III)は(IV)や(V)に比べて配座安定性や熱的安定性が著しく大きい. (III)においてm=n=6の38員環まで合成出来たがこの系においては(4m)系として〔28〕アヌレンまで, (4n+2)系として〔34〕アヌレンまで環電流効果を示した. 3.メタノチアヌレン類 統計的に合成した(VI)のうち, チア〔15〕-, チア〔21〕アヌレンには環電流効果がみられなかったが, チア〔17〕-, チア〔19〕アヌレンは, それぞれDiatropicity, Paratropicityを示した. このことより(VI)では架橋基の存在により, 環の大きさと共にtropicityが減少しないことが判明した. 4.アザ〔12〕アヌレン (VII)は, 12Π電子系であることに一致して, 予想通りparatropiatyを示すことが判明した.
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