研究概要 |
61,62年度の2ケ年計画で実施した4件の研究は何れも成功した. 1.ニトロフランカルボン酸エステルのニトロ基の置換反応:2-ニトロプロパンとの反応により2位のニトロ基は消去され, 3位に2-ニトロー2-プロピル基が導入された. これにより, 3位への位置選的アルキル化の新方法が開けた. ^<1)> 2.ディールスアルダー反応の配向制御:フェニルーβ-ニトロビニルスルホンは予想通り優秀なジエノフィルで, 完全に配向選択的であり, 閉環後トリブチルスタナンで両官能基を除いて不飽和結合に変換できた. 従って, この試薬は, アルキン類の優秀な配向選択性シントンであると云える. ^<2)> 3.シクロプロパンカルボン酸の高効率合成:2-フェニルチオメチルー3-フェニルチオプロパン酸アニリドをジアニオンにすると, 直ちに2-フェニルチオプロパンカルボン酸アニリドを生ずることを見出した. 更に, これを再びジアニオンにして, アルデヒドを与えると, 2位でアルドール付加を起こし, これを酸性で如水分解すると, シクロプロパン環を含む二環性ラクトン(ホモブテノリド)が容易に得られた. これは極めて効率の良い新合成法と云える. ^<3)> 4.光学純度100%の不斉アルコールの新合成法:1-p-クロロフェニルスルホニルー3-クロロアセトンはパン酵母によって容易に還元され, 光学純度100%の(R)1-p-クロロフェニルスルホニルー3-クロロプロパンー2-オールを得た. 収率85% このものを酸化銀で1,2-エポキシドに変え, グリニヤール試薬とヨウ化銅を加えると, 3位が容易にアルキル化された不斉アルコールに変り, 光学純度は100%S型に保たれた. ^<4)> 更に, これをジアニオンに導き, ハロゲン化アルキルを与えると, 1位でアルキル化が起き, このときも2位の不斉は100%Sで, 3位のアルキル基は2位に対してエリトロ型が優先した. スルホンの代りにスルホキシドを用いると, 逆にトレオ体が優先するので, 結局, 両ジアステレオマーを選択的に合成できる. ^<5)>
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