研究概要 |
われわれはキノコから毒成分として単離したアクロメリン酸A, Bをカイニン酸より合成し, その構造を確定した. 合成に当っては立体化学の解明を第一に考えたため, 絶対配置が既知のカイニン酸から誘導した. 従って化学変換はイソプロペニル基のピリドン環への変換に集約され, プンメラー反応を利用した1.5-ジカルボニル化合物を経由するピリジン環新合成法やピリジンーN-オキシドのピリドンへの転位の新条件を開発して合成を完成した. 合成が行われたことにより生理活性テストが可能となり, アクロメリン酸がこれまで知られていたものに比べ格段に強い神経興奮作用をもつことが判明した. そこで(1)アクロメリン酸A, Bのより簡便な合成, (2)アクロメリン酸類縁体の合成-アクロメリン酸のアゴニスト及びアンタゴニストの探索 i)ピロリジン環上の3個のキラル中心をセリンのキラリテイで制御するクライゼン反応で合成する案を試行中. 現在ピリドン環をフエニル基としたもので収率のよい反応条件と生成物の立体化学を検討中. ii)アクロメリン酸が強い神経興奮作用を示すには分子中のどの部分の構造が大切であるかを調べるため種々の類縁体を合成し, グルタメートの応答増強をアイニン酸やドーモイ酸と比較した. その結果芳香環のある位置にπ電子密度の高い基があることが活性を高めていると思われる. iii)芳香環部分をフエノールとしたものを合成すべくカイニン酸のイソプロペンル基をフエノールに変換するためのモデル実験を行っている. また, ピロリジン環上の立体化学を選択的に構築するため, 9員環ラクトンのビシクロ〔4・3・0〕ノナン系への水銀やNBSによるラクトン化に次ぐラジカル閉環を試行している. 環内に臭素と二重結合をもつ9員環ラクトンを得て, これからのラジアル閉環の条件と立体化学を検討中である. また, ピロリジン環のスC3C4間の結合をヘテロジールズアルダー反応で構築する径路も検討しているが, 現在はまだ鍵反応段階に至っていない.
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