研究概要 |
1.イネのいもち病病斑形成と酸化酵素活性の関連性について イネは, いもち菌のレースにより, り病型病斑(S-型)あるいは抵抗型(R-型)病斑を形成する. レースと病斑形成の関連については今日まで全く未知の分野であった. ササニシキ, ほまれ錦, その他6種のイネについて, いもち菌のレースを変えて接種し, おのおのS-型およびR-型の病斑をもつイネを調整した. おのおののイネの酸化酵素活性を調べた結果, イネの種類には無関係に, S型病斑のイネでは接種後7日目に酵素活性が最大となり, R型病斑では3日目に最大活性を示すことがわかった. このことは, これまで謎とされてきた, R, S型病斑形成の差は, いもち菌感染によってイネ体内における不飽和脂肪酸の酸化酵素活性, 換言すれば, イネ体内におけるパーヒドロ不飽和脂肪酸の量と密接に関連していることが明らかとなった. 2.り病イネの酸化酵素による不飽和脂肪酸の酸化反応 植物油に普遍的に含まれるリノール酸やα-リノレイン酸および最近関心がもたれているγ-リノレイン酸, さらに動物油の主成分であるアラキドン酸EPAやDHA等に対するイネ酸化酵素の反応性を調べた. その結果, リノール酸においては, 酸化の位置選択性はあまり認められなかったが, それ以外の不飽和脂肪酸は, 位置および立体選択的に酸化され, 相当するパーヒドロ体を与えることが明らかになった. アラキドン酸由来の酸化生成物は, 動物の不飽和脂肪酸の役割りを研究する際の重要な鍵化合物であると期待できる. 3.り病イネの代謝する高酸化型脂肪酸, LTB_4関連物質の構造 り病イネの代謝する高酸化型不飽和脂肪酸の一つは, 9,16-ジヒドロキシーオクタデカー10,12,14-トリエン酸であることを合成によって確認した. この物質は新規天然物であり, 抗いもち菌活性あるいは白血球に対する活性等, 興味深い天然物である.
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