研究概要 |
原子スペクトロメトリー, 特にファーネス原子吸光分析法あるいはICP発光分析法は高感度分析法の一つであるが, 湖沼水, 海水などの自然水中の超微量元素の定量に対しては, 要求される試料濃度に対応していると云えない嫌いがある. 従って自然水中の超微量元素の分析を試みるためには溶媒抽出, イオン交換分離, 共沈濃縮-再溶解などの予備濃縮を兼ねた試料前処理が併用されてきたが, これらの方法は前処理に長時間を要するし, 濃縮倍率に限度があり, しばしば試薬からのコンタミネーションが問題となる. しかし一方, 我々はMiniature cupを開発することによって原子スペクトロメトリー, 特に原子吸光分析法による固体粉末試料の直接定量を可能にしてきた. 我々はこの新しい測定法と有機試薬共沈法とを結合することによって, 上記の溶媒抽出などによる方法の1000倍以上の高感度な分析法を確立した. 以下に研究成果の概要を列記する. 1)オキシン共沈予備濃縮法に関する基礎的検討を行ってsub-ppbレベルの超微量元素の最適共沈条件について検討した. すなわち, 共沈キャリアーイオンの選択, 最適pHの選択, 回収率について求めた. その結果, オキシン共沈にはマグネシウムがキャリアーイオンとして最適であり, Cu, Mn, Cd, Pb, Znなどの元素はpH9以上では100%の回収率を示すことが明らかとなった. 2)有機試薬としてニッケル, バラジウムに特異的なジメチルグリオキシムを使用した場合は, 目的元素に合致した補助錯化剤を添加する事によって共沈濃縮が可能となることを明らかにした. これらの予備濃縮法を適用するならば,摩周湖水あるいは海水中のsub-ppbレベルの超微量元素の定量が容易に行いうることを明らかにした.
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