研究概要 |
非水溶液中におけるイオン選択性電極の応用に関する研究の一環として, 陰イオンに応答するガラス電極の開発とその非プロトン溶媒中における応用について研究した. 酸化銀を含むリン酸系及びホウ酸系の電子伝導性ガラスとイオン伝導性ガラスについて, 種々の組成のものを作成し, ガラス膜電極として, 各種の陰イオンに対する応答性を調べた. 例えば, 5Ag_2O-50P_2O_5-40MgO-5A1_2O_3の組成の電子伝導性ガラス膜電極はアセトニトリル中のハロゲン化物イオンにネルンスト勾配で, 硝酸イオンや過塩素酸イオンにはそれよりやゝ小さい勾配で応答した. しかし, この電極が応答するのはガラス膜をエポキシ樹脂を用いて支持材に固定して電極を作製する場合など, 条件が比較的限られており, 応答の機構などはまだ不明である. また, この電極は溶媒による陰イオンの溶媒和エネルギーの変化に対しては応答しなかった. 50AgI-25Ag_2O-25B_2O_3の組成をもつ超イオン伝導性ガラス膜電極は各種の溶媒中で塩化物イオンの濃度変化にネルンスト応答し, また溶媒和エネルギーの変化に対してもほぼ熱力学的に応答した. 臭化物イオン及びよう化物イオンには濃度変化にも溶媒和変化にもスーパーネルンスト勾配で応答した. この電極を塩化物イオンの溶媒和のセンサーとして用いて, アセトニトリル中の塩化物イオンの水との逐次錯形成反応の研究を行い, 錯生成定数を求めた. この超イオン伝導性ガラス膜電極は非プロトン性溶媒中で一応利用できるが, 水やメタノール中ではガラス膜表面でAg_2Oがハロゲン化物イオンと反応して, 沈澱被膜を生じる欠点がある. 現在, この欠点を除くためにAgI, Ag_2S, P_2S_5などからなるカルコゲナイドガラスの膜電極について検討中である. なお, ガラス電極の研究と並行して, イオン溶媒和の研究を行なう際に測定上問題となる異種溶媒間の液間電位差についても詳細に研究した.
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