研究概要 |
核磁気共鳴と同位体置換法中性子回折の核プローブ法を用いて, 溶体中の化学交換反応の動的・平衡論的性質と原子配列様式を融合的・整合的に究明する. 〔I〕核磁気共鳴法によって, 化学交換反応を伴う溶体に対し, 縦磁化回復の経時変化とNMRスペクトルを測定し, エネルギー緩和(縦緩和)と位相緩和(横緩和)の核ブロッホ方程式の一般解にもとづいてそれ等の観測量の理論的評価を行った. 1)硫酸アルミニウム水溶液中での配位子交換過程による化学交換反応 [Al(H_2O)_6]^<3+>+SO<2-(1)4>【double arrow】[Al(HD_2O)SO_4]^++H_2O (1) 及び2)溶融クロロアルミナート内での異種多原子分子間交換過程による化学交換反応 2AlClD-^(1)_4D【double arrow】Al_2Cl<-(1)7> (2) の動的・平衡論的性質を27AlNMRから決定した. 3)生体系濃度での ATP+Mg^<2+>水溶液内での金属イオンの結合解離過程による化学交換反応 ATP+[Mg(H_2O)_6]^<2+>【double arrow】ATP(H_2O)・・・・・Mg^<2+>+5H_2O ATP(H_2O)・・・・・Mg^<2+>【double arrow】ATP(Mg^<2+>)+H_2O (3) を^<31>Pと^<25>MgNMR測定から提出し, Mg^<2+>の結合部位と反応機構を明らかにした. ATP(H_2O)・・・Mg^<2+>及びATP(Mg^<2+>)はそれぞれ外圏錯体と内圏錯体に対応している. 〔II〕同位体置換法を多原子錯イオンを含むイオン性融体のLiAlCl4融体とLiNO_3融体に対して適用を試み, 中性子回折実験による構造解析を行った. その結果, 融体中の錯イオンの構造, 金属イオンの錯イオンへの立体配座, さらに錯イオン間の空間配向に関する重要な知見を得た. 本研究で, 確立された溶液内化学交換反応の動的・平衡論的性質の決定と溶液の構造解析の手法は, 水溶液内生体分子と金属イオンからなる複雑な系への応用発展が可能である.
|