研究概要 |
1.中性子放射化分析法を植物試料に対して適用する場合の正確さおよび精度に関し, 3種の植物標準試料を用いて検討し, Na, K, Rb, Ca, Cr, Mn, Fe, Co, Zn, As, Sbについて満足すべき結果を得た. この方法によって, マツおよびリョウブの葉の中の遷移元素(Mn, Fe, Co, Znなど), アルカリ金属(Na, K, Rb, Cs)およびランタノイド元素を定量し, 同一地域で採取した2種の植物の間で各元素含有量にかなりの違いがあること, 従来知られていたリョウブによるコバルトの濃縮がその生育地域と関係なく普遍的におこっていることを確認した. 2.原子吸光分析装置を設置して, 含有量既知の試料を用いて各元素の検出感度などの性能について検討し, Cr, Mn, Fe, Co, Znなどについては本研究の目的に適する精度と正確さをもって定量しうることを確認した. しかし松葉試料の場合, 灰化して酸に溶かし, これを試料として直接測定する方法では, 含有量が比較的多いMnとKのほかは, 定量結果は必ずしも満足すべきものではなかった. 干渉の除去のために何らかの簡単な化学処理が必要であると思われる. また原子吸光分析法はSr中に混入したBaの定量にも役立つことがわかった. 3.EXAFSおよびXANESの測定を生体試料中の微量金属の存在状態の研究に利用するための準備として, 数種の金属錯体結晶, 金属錯体を含む数種の溶液系およびNiゼオライト解媒中の金属元素について検討した. ついでこれを亜硝酸還元酵素およびアスコルビン酸酸化酵素の中に含まれる銅の存在状態の研究に適用した. 4.植物から微量金属含有成分を抽出してその実体を解明しようという計画は, 研究者の所属機関変更によっておこった制度上の要請による研究組織縮れのため, これを中止した.
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