研究概要 |
低解像度のX線粉末回折図形解析システムを開発した. このシステムは, 従来中性子線回折データに対して提案された方法をX線粉末回折データの解析に応用したものである. このシステムは粉末回折図形における重なった回折線を個々の成分に分解し, それらの積分強度を求め, そして回折線プロフィルを角度の関数として求めることができる. さらにこのシステムは各回折線位置が格子定数の関数であることを用い, 格子定数の精密化に用いることができる. これらの解析において必要な知識は格子定数の近似値のみであり, 構造モデルを必要としないため, 構造が未知の物質に対しても容易に適用できる. この解析システムは複数成分の試料を取扱えるため, 試料が内部標準を含んでいれば, ピーク位置のズレを自動的に補正して格子定数を精密化することができる. 2年間の研究期間において, システムの基本設計, X線粉末回折データ用のプロフィルモデルの研究, システムを実行するための計算機用ソフトウェアの開発(プログラム名:WPPF), 及び完成したシステムの性能試験を行なった. 解析システムの開発には32ビット・パーソナルコンピューターを用いた. 各種のテスト試料の粉末回折データをこのシステムを用いて解析した結果, 1)従来のプロフィルフィッティング法に比べて重なった回折線に対する分解能力がはるかに高い, 2)パターン全体を同時に処理するために解析の効率が高く, 自動化に適している. , 3)測定の客観性, 高い精度が得られる等が明らかとなった. 将来の問題として, 1)システムの一層の自動化が必要である, 2)悪い条件下でも最小二乗法による精密化をスムーズに実行できる様にする等, 一層の改良が望まれる.
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