研究概要 |
1.アルミニウムの表層構造--放射光による圧力上昇が見出された加速器真空系の主要構造材料であるアルミニウム合金について表層構造の調査を行い以下の結果を得た. (1)電解研摩を施したアルミニウム合金(含マグネシウム合金)の表面に形成する初期酸化層は非晶質の水和酸化物であり, 真空中加熱で脱水して欠陥を含む非晶質構造となる. その構造はγ-AL_2O_3またはそれにほぼ相当するものでることが電子線回折による既約動径分布関数解析から推定された. (2)加熱に伴い, Mgはこの非晶質酸化層中の不整合領域を介して短回路拡散機構などにより輸送され, MgO外層の形成をもたらす. (3)MgOの外層形成はベーキング温度相当の150°Cにおいても進行する. 2.ガス放出における表層構造の影響--表面からの気体放出特性およびベーク・アウト効果に及ぼす表層構造の影響を明らかにする目的で昇温脱離実験を行い以下の結果を得た. (1)電解研摩を施した表面は, 加熱に伴って, 100°Cを超えると表層の熱分解によると思われる急激なガス放出現象がすべての気体種(H_2O, H_2, CO, CO_2)で見られる. (2)AL-2.3%Mg合金の酸化表面は, 大気露出に際してCOガスを除く他の気体種(H_2O, H_2, CO_2の化学吸着が見られる. (3)ガス放出特性と表層構造との間に相関が見られた. 3.光照射に伴うガス放出と表層構造の役割--光照射に伴うガス放出の機構と表層構造の影響を明らかにする目的で, 表層構造の異なるアルミニウム材料について光照射実験を行い以下の結果を得た. (1)陽極酸化, 電解研摩, 高温酸化(500°C, 10Torr, 純酸素中1h)をそれぞれ施した表面に, 高エネルギ物理学研究所の放射光を照射して放出ガス量を測定した. 光子数で規格化した脱離係数値は, 陽極酸化>電解研摩>高温酸化であった. (2)光照射に伴うガス放出が表層の構造と化学的性質(水和度)の影響を受けることを実験的に見出した.
|