研究概要 |
塗装鋼板の劣化を非破壊・連続測定する方法としてPAS, AE, 交流インビーダンス法を適用することを試み, 次のことが明かとなった. (1)塗膜劣化過程の各段階における巨視的現象と劣化機構が, AEの観察, PA信号変化および交流インビーダンス測定結果とよく対応する. (2)劣化過程におけるAE計数およびAE波形解析により, 塗膜劣化開始時期の検出, 塗膜の剥離進行速度の識別が可能であること, また, カソード分極により劣化を促進した場合の塗膜剥離と水素発生のAE信号を, それぞれ分離できることが示された. (3)PA信号は塗膜の劣化・剥離の発生で振幅が低下することにより劣化が検出されるが, 特に塗膜/金属界面に空気層が形成された場合の信号変化は極めて敏感であり, ふくれの位置と拡がりを2次元的に精度よく同定できること, さらに, PZT・圧電フィルムをセンサーとすることにより, 耐雑音性・位置検出精度のより高い測定の可能性が示された. (4)塗膜劣化に伴う交流インビーダンス特性の変化が明らかにされ, 高周波側にみられる折点周波数が塗膜剥離面積に対応することが示された. さらに巨視的な欠陥を持つ塗膜についても交流インビーダンス特性の解析から, 欠陥の大きさ・剥離の程度などを評価できる可能性が示された. 以上, 本研究では4つの異なる視点から塗膜劣化を評価することを試み, 各方法はそれぞれに特徴を持つものであるが, 塗料・塗膜あるいは下地処理の開発評価には, これらのいわば要素技術を組み合わせた総合的塗膜評価システムを構成してゆくことが必要であることが確認された. 本研究は, そのようなシステムを構成していく上での基礎データと今後の研究・開発の方向性を与えたといえる.
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