研究概要 |
本研究所ではモデル2相複合体を対象として粒子分散セラミックスの靭性向上機構ならびに緩やかなクラック成長の機構に及ぼす各種の微細構造因子の影響を基礎的に追究した. 研究成果の概要は以下の通りである. 1.ガラスマトリックスに高膨張結晶粒子が分散した複合体の破壊 分散粒子の熱膨張係数がマトリックスのそれよりも大きな複合系として, ガラスーアルミナ粒子およびガラスーマグネシア粒子複合体を選び, 靭性向上機構を考察した. いずれの複合系においても破壊靭性は分散粒子の体積割合の増加と共に増加するが, その挙動は分散粒子径, 分散粒子の形状, 熱膨張ミスマッチの大きさに強く依存する. 研究対象とした複合体の破壊過程では, 主クラックの湾曲と偏向の両機構が基本的なエネルギー散逸機構として作用するが, 熱膨張ミスマッチに起因する微細クラック発生の条件を満たす複合系では, これに加えてマイクロクラッキング機構が靭性上昇に寄与する. 2.ガラスマトリックスに低膨張結晶粒子またはガラス粒子が分散した複合体の破壊 分散粒子の熱膨張係数がマトリックスのそれよりも小さな複合系として, ガラスーアルミナ粒子およびガラスーシリカ粒子複合体を選び, マイクロクラッキング機構に焦点を合わせて靭性向上機構を追究した. 構成相間の熱膨張, 弾性率, 靭性に大きなミスマッチが依存するアルミナ分散系と熱膨張ミスマッチのみが存在するシリカ分散系の靭性の挙動を比較, 検討し, マイクロクラッキング機構についての基礎的な知見を得た. 3.分相ガラスにおける緩やかなクラック成長 球粒子分散構造を示す分相鉛ホウ酸ガラスに対に対して圧子押込みで誘起した微小クラックの徐荷後の成長を追跡した. 実験結果を微細構造因子との関係において解釈し, 水分を含む環境下において緩やかに成長するクラックと分散粒子との相互作用を明らかにした.
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