研究概要 |
単一系および複合系酸化物多孔質体を有機金属化合物を出発原料としゾルゲル法によって作製し, その細孔特性に及ぼす出発原料・溶媒・触媒およびそれらの混合比の影響について検討した. まず多孔質シリカ原料混合液のゲル化時間・ゲルの気孔率に関する触媒の影響を調べ, 酸・塩基触媒下での加水分解・縮合反応のモデルを提唱した. 溶媒の種類および混合比により気孔率は15〜62%の範囲で制御可能である. 一方, SiO_2に微量の不純物を加え, より高い機能性を付与する場合のゲルの熱的安定性を, DTA-速度式を用いて解析し, 最適熱処理温度を示した. 複合系酸化物としては, ホウ珪酸塩を選んだ. バイコール組成に近い80SiO_2・15B_2O_3・5Na_2O(wt%)を中心とするゲルを作製し, その気孔率・比表面積・赤外吸収スペクトルなどを調べた. ゲルは450°Cで熱処理すると最大気孔率(約35%)を示し, 500°Cでポアは消滅し, 得られた非晶質体は分相する. その後さらに加熱を続けると, クリストバライトが析出することがわかった. これらの結果から, 各温度(300〜650°C)で熱処理したときのゲル内での構造的変革について検討した. また, このホウ珪酸塩ゲルからのクリストバライトの析出に関し, DTAにより詳しく検討し, ゲルから得られた非晶質体と溶融・急冷して得られたガラスとの構造的相違についてゾルーゲル調整のプロセスにまで立ち戻って考察した. その結果, ガラス中ではNa^+イオンはBO_4^-単位の生成にすべて用いられるのに対し, ゲルから得られた非晶質体内では, BO_4・Na単位は, きわめて僅かであり, ほとんどがガラス中には存在しないNaO-SiおよびB-ONaの結合に参加していることがわかった.
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