研究概要 |
乾電池, 一部のリチウム電池の正極に使用される二酸化マンガンは不定比化合物で多様の構造があり, また, 含水物を含めて複合酸化物も電池用としては二酸化マンガンの範ちゅうに入る. これらのものはすべて, MnO_6八面体をセグメントとする種々の構造であり, 水, イオンを取り込んで安定化しているものも多い. 一方, 乾電池で減極作用の高い電解合成品(2MnO_<1.98>・H_2O)は, 400°Cに加熱して脱水とともに若干変態したものがリチウム電池では高い減極作用を示しても, 乾電池用には使えない. このように, 電池用二酸化マンガンは, その結晶構造と電極反応(電子注入, プロトンまたはリチウムイオンの電荷補償侵入反応)との関連はそう単純ではない. 本研究では, 二酸化マンガンの結晶構造と減極作用機構との関係, さらに放電に伴なうその経時的変化に着目して詳細に検討した結果, つぎの知見・成果をえた. (1)電解合成二酸化マンガンは, OH基の形で水分を多量に含有する組成で次元の異なる部分(層状, 孔状など)を持つIntergrowth結晶とする説を従来の諸説に加えた. (2)リチウム電池用には, 層構造, スピネル関連構造を持つ含リチウム複合酸化物が特徴的に利用できる. 乾電池用には前項の含水分電解物をか性カリウム中で用いる系が推賞される. 乾電池用には全く不敵のβ構造(セグメント1×1型)のリチウム電池用としての可非は断定し難い. (3)二酸化マンガンの減極作用の放電による経時変化はS字型で示される. S字型の中間部の擬似直線部分の勾配は, ネルンスト式を適用してえられる値の2倍になる. これは, 二酸化マンガン中への侵入イオンの活量の関与を考慮すればそのようになる. また, 現実のS字型の後半の歪みは, 二酸化マンガン固体中での侵入イオン間の斥力を考慮することによって, 次元の異なる結晶構造に対する理論式群から合理的な説明が可能である.
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