研究概要 |
(1)溶融炭酸塩の熱力学的性質:金属組成の異なるアルカリ炭酸塩の安定性を比較検討するのに適した状態図として,炭素活量と酸素分圧の各々の対数を軸にとり,その平面上に各炭酸塩の安定領域を示す方式の状態図を提案した. この状態図を用いると,種々の雰囲気での炭酸塩の安定性や,その安定性の金属組成変化に伴う変化が直ちに判断できる. (2)溶融炭酸塩とセラミックスとの化学反応性:炭酸塩と著しく反応するセラミックスの例として,安定化ジルコニアを,また比較的安定な導電性セラミックスの例として,酸化ニッケル及びニッケルフェライトを選択した. (1)安定化ジルコニアは,数百度以上では,固体のアルカリ炭酸塩と接しただけで破壊に至る激しい腐食を受けることがある. 種々の条件下で反応した試料を,X線回析,SEM,EPMAなどで検討した結果,この腐食現象の主な原因が,アルカリ金属スオンのジルコニアセラミックス粒界への侵食によるものであることなどが判明した. (2)酸化ニッケルやニッケルフェライトは溶融アルカリ炭酸塩に微量ながら溶解する. これら酸化物から混合アルカリ炭酸溶融塩中へのニッケルの溶解度を,アルカリ金属成分の組成,温度,およびCO_2分圧の関数として測定し,溶解度を決定づけている要因を検討し,以下の結論が得られた. 1023K以下では,いずれの酸化物からのニッケルの溶解度もCO_2分圧に比例し,酸性溶解[NiO(s)+CO.ナ_<2.ニ>(g)=Ni^<2+>(1)+CO.ナ_<3.ニ>^<2->(1)]の形で反応が起こる. 溶解度は温度上昇に伴って低下する. 単一アルカリ金属炭酸塩では,溶解度はリチウム塩が最も小さく,カリウム塩が最も大きい. ニッケルフェライトの溶解度は酸化ニッケルより約1桁小さい. また,溶解度は酸化物中にニッケルのモル分率にほぼ比例する. (3)成果の取りまとめ:以上の成果を取りまとめ,環境科学研究センター紀要,各学会誌などに投稿した.
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