研究概要 |
第14族有機金属基はベータ位の炭素カチオンを安定化する. この概念を拡張し, これら金属基のベータ位に存在する炭素-炭素結合を高選択的に開裂する反応を設計し, 以下に記す新しい高選択的なシグマ結合の開裂反応を発見した. ベータ位に有機ケイ素基を有する多様なオキシムアセタートは, トリメチルシリルトリフラートを用いる求電子的活性化を受け, 温和な条件下に位置および立体特異的に炭素-炭素結合が開裂するケイ素配向型ベックマン開裂を発見した. この方法論は従来のフッ化物イオンによる活性化と比べはるかにすぐれた選択性と適用範囲を示すことも明らかにした. このケイ素の超プロトン機能を活用する新規ベックマン開裂がオレフィン類の立体特異的合成に応用できることを数種の昆虫フェロモンの合成で実証した. 一方ベータ位に有機スズ基を有するオキシムはケイ素とことなり四酢酸鉛を用いた酸化的活性化により炭素-炭素結合が高選択的に開裂し, ニトリルオキシド中間体の立体特異的生成と分子内環状付加を経由して対応する △^2-イソキサゾリン誘導体を生成することを見い出した. これらの新規フラグメンテーション反応の基質を位置および立体選択的に作り分けることの出来る新しい二重アルキル化法も開発した. ほとんどが新化合物である原料基質の構造決定に本補助金で購入したCHNコーダーは有力な手段となった. オキシムに類似する骨格における超プロトン的開裂をついで検討し, ベータ金属置換カルボン酸類の温和な条件下における選択的脱炭酸反応およびヒドラゾン誘導体からのアゾシクロプロパン生成とその炭素-炭素結合開裂によるピラゾリン合成を発見した. さらにケイ素に対しベータ位に遷移金属カチオン中心を有する反応系に研究を拡張し, トリメチルシリルメチルールテニウム結合で従来全く知られていなかった新しい炭素-ケイ素結合の開裂による転位反応を発見した.
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