研究概要 |
2年間の研究により次の様な成果を得た. 1.デヒドロオリゴペプチドの不斉水素化:Y-ΔPhe-(SorR)-AA-OH型デヒドロジペプチドの不斉水素化において分子内にアミノ基を持ち基質のカルボキシル基との静電的相互作用が可能なジホスフィンDPP-AEを開発し, そのRh触媒を用いてアミノ保護基Yの種類によらず1,4-不斉誘導により84〜96%d.e.の高い不斉収率を達成した. 反応条件を詳細に検討し, 配位子のアミノ基と基質カルボキシル基間の静電的相互作用が触媒の多点認識を可能とし高立体選択性をもたらす事を示した. 本反応系は溶媒依存性が強く, 極性の大きなアルコール中で高い選択性が得られる. DPP-AEに電子供与性基を導入すると基質特異性が強くなり, 更に特異な温度依存性を示す様になることを明らかにした. 2.環状アリル化合物の不斉アルキル化:Pd-ジホスフィナイト(POP)を中心に検討を行い, POP系がジホスフィン系よりも高いエナンチオ選択性を示す事を明らかにした. 配位子の電子的・立体的要因を変えるため修飾を行い, リンについたフェニル基のm-位にメトキシル基を導入することや2ケのジホスフィノオキシ基を非対称化することによりエナンチオ場選択性が向上することを明らかにした. 本反応系では求核試薬の構造も重要であり, アシルアミノ基を有するカルバニオンを用いて50%e.e.までエナンチオ場選択性が向上することを見出した. 更にアルコール溶媒が高選択性を得るのに有効という興味ある事実を見出した. 3.イミン化合物の不斉求核付加:種々のCo-アミノ酸錯体をキラルなイミノ酸錯体に誘導する手法を検討し, 脱水素反応, β-脱離反応等構造に対応しての合成法を確立した. X線構造解析によりイミノ酸錯体がΛ-β_2配座を取り, イミノ酸キレート環が平面であることを明らかにした. キラルなイミノ酸錯体への求核付加としてNaBH_4による還元を行い, 光学活性アミノ酸錯体が得られる事を示した.
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