研究概要 |
走磁性細菌の合成する磁気微粒子は人工の磁気微粒子と比較しても非常に優れた点が多い. そこで走磁性細菌から分離した磁気微粒子に酵素, 抗体を固定化し医療や計測への応用を行った. 走磁性細菌は酸素分圧, PH, 炭素源窒素源等の条件を検討することで汚泥中において40倍まで増殖させることができた. また, 磁性細菌粒子はマグネタイト(Fe_3O_4であり, 周囲を一様に有機薄膜によって覆われていることが明らかとなった. 磁性細菌粒子への酵素, 抗体の固定化は, 磁気微粒子をγ-アミノプロピルトリエトキシシラン, グルタルアルデヒド処理した後, 酵素,抗体溶液中で4°C, 12時間放置することで行った. その均一な形状, 微小なサイズから磁性細菌粒子には非常に多くの酵素, 抗体が固定化され, 高活性を示した. そこでグルコースオキシダーゼを磁気微粒子に固定化し, グルコース濃度の測定を試みた. 酵素固定化磁気微粒子を攪拌素子として用い, グルコースとグルコースオキシダーゼとの反応により生成するH_2O_2とo-ジアニシジンの酸化発色による吸光度変化を測定したところ, 0.1〜4.0mg/mlの範囲でグルコース濃度の測定が可能であった. 次に, 磁性細菌粒子に抗大腸菌抗体を固定化し, 細胞の選択的分離を試みた. 大腸菌懸濁液中に大腸菌抗体を固定化した磁気微粒子を加え磁気的に攪拌, 分離したところ, 大腸菌数が減少した. これに対し乳酸菌, 酵母では菌数の変化が見られなかったことから, 細胞の選択的分離が可能であることが示された. また, 磁性細菌粒子に抗偏平上皮がん関連抗原(SCC)抗体を固定化し超音波で分散させた後SCCを加えると抗原抗体反応により強い凝集が数分で形成した. これより抗体固定化磁気微粒子を用い, 光学顕微鏡観察することで非常に微量な抗原の迅速な検出が可能となった. 以上の結果, 磁性細菌粒子に酵素, 抗体を固定化することで医療, 計測への応用が可能となった.
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