研究概要 |
セリシンとポリビニルアルコールとのブレンド物の構造と物性について, 次のことを明らかにした. 1), セリシンとPVAは, ミクロ相分動構造を形成することを電子顕微鏡で確認するとともに, その領域にはポリマーコンプレックスが形成されることを推定した. 2)PVAは, 170°C附近でtan√の測定が不能になるのに, セリシンをブレンドすることにより, 240°Cまで測定が可能となり, 2相間に何らかの分子間相互作用の存在が推定された. ブレンド繊維についても同様であった. 3)熱機械的性質は, 150〜200°Cの間でブレンドフィルムは分子鎖間にスベリを生じさせないような分子間力の働く部分の存在が推定された. これを繊維化させると, セリシンは非晶鎖の分子配向を妨げるように挙動し, これが熱収縮を防止する効果として現われた. 一方, フィルムの強伸度曲線は, 10〜20%セリシ含有により300%もの伸長が可能であるが, ブレンド繊維では, セリシン含有10%付近で, 優れた高強度特性を示し, セリシンは一種の可塑剤的な作用を示すことを明らかにした. 4)セリシン含有によりブルレドフィルムは著しく吸湿性を増加する, これはセリシンの非品的構造の影響であり, 酸性染料の染着料もセリシン含有率に比例している. 5)セリシン含有量とセリシンのNH基およびPVAのOH基の量的関係をIRスペクトルにより検討し, ポリマーコンプレックスの形成を明らかにした. これにより上記各項での分子間相互作用の影響を明らかにすることができた. 今後, 分別された易溶性セリシンおよび難溶性セリシンとPVAブレンド物の物性を検討したい.
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