研究概要 |
従来, 非常に分析が困難であった血中カテコールアミン(エピネフリン及びノルエピネフリン)の微量分別定量法を, HPLC-電気化学検出器を用いて微量(10〜20μl)の血漿で本研究遂行に十分な感度と精度とを示す優良な分析法を確立することができた. 同時に, 本方法を用いることによって血漿のみならず尿や組織中の微量のカテコールアミンの分析も可能となった. さらに, 小動物用人工呼吸器及び直腸温と連動させたヒールティングパッドを用いることによって, ラット副腎静脈血中に分泌されるカテコールアミンの量を長期間モニターすることが可能なinsituの実験系を, はじめて確立することができた. このinsitu実験系を用いて, まず食品成分のうちで, 我々が日常摂取している辛味香辛料について, ラット副腎からのカテコールアミン分泌応答を検討したところ, トウガラシ, ショウガ, コショウなどの辛味成分に強い分泌亢進作用のあることがはじめて見いだされた. この作用は, 我々が既に明らかにしてきた高脂肪食摂取ラットにおけるトウガラシ辛味成分の脂質代謝・肥満抑制作用の発現に深く関わっていることが示唆された. さらに, タンパク質の消化産物であるオリゴペプラドやアミノ酸などの栄養素にも類似のカテコールアミン分泌亢進作用のあることが明らかとなった. 即ち, いくつかの食品成分(栄養素及び非栄養素)が, 副腎からのカテコールアミンの分泌を変化させて生体のエネルギー産生機構に関与しているという全く新しい知見が得られた. 本研究の成果は食餌性肥満の発症に深く関与していると考えられている食餌誘発性体熱産生機構(Diet-Induced Thermo-genesis)の解明に重要な新知見を提供するものであり, さらにその予防・治療法に関するより安全性の高い医療品や新しい機能性食品の創製への極めて重要な指針をもたらすものである.
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