研究概要 |
1.ヒト正常白血球からのミエロペルオキシダーゼを単離精製し, はじめて結晶化に成功した. 結晶酵素は3種の成分酵素タンパク質が混合していることを認めたので, 陽イオン交換クロマトグラフィーにより各々均一に分離した. 2.精製した3種の成分酵素の分子量, 分子形, サブユニット構成, 吸収スペクトル, 円偏光二色性, 磁気円偏光二色性, アミノ酸組成などの特性を明らかにした. 本酵素は大小サブユニット2個ずつの4量体2_2β_2酵素であるが, 3種の成分酵素は大サブユニットの分子量だけが違うことを認めた. 3.本酵素を還元後アルキル化して半量体酵素2βを調製し, 酵素活性が低下しないことを認め, 沈降及び拡散分析ならびにX線小角散乱法を利用して分子量, 分子形を算出した. その結果, ホロ酵素, 半量体酵素とも従来の報告の結果と違って球対称に近い分子形をもつことを明らかにした. 4.本酵素を変性条件下で還元開裂して大小サブユニットを分離精製して, アミノ末端, カルボキシ末端近傍のアミノ酸配列を決定した. すでに報告されている本酵素のcDNA塩基配列から推定される本酵素前駆体の一次構造と対比して, 細胞内プロテアーゼによるプロセッシングの位置を証明した. また, 本酵素が含有する緑色ヘムは, 大サブユニット状に共有結合して存在することを明らかにした. 5.本酵素の反応機構を解明するため, 本酵素に過酸化水素を加えて反応中間体が生成, 消失する過程を追跡した. その結果, 反応中間体Iはきわめて短寿命であり, 反応中間体の生成には大過剰の過酸化水素の添加が必要であることを認めた. またこれらの反応過程中の分子状酸素発生量を定量し, 本酵素が強力なカタラーゼ活性を発現することを証明した. また半量体酵素もホロ酵素と同様な反応特性を保有することを明らかにした.
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