研究概要 |
頻用される真核生物の蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミドに対して酵母Candida maltosaが誘導性耐性を示し, それがリボソームの変化に由来することを見出した. またこれに関与する遺伝子をSaccharomyces cerevisiaeの宿主-ベクター系を用いて単離することに成功した. この遺伝子の導入によりS.cerevisiaeの中でもリボゾームが変化し, 耐性化することを示した. この遺伝子RIM-Cに関し新たに以下のことを明らかにした. 1.リボゾームの修飾がいかなるものであるかと解明するため, この単離したRIM-C遺伝子をプローブとして, 修飾されたリボゾームのrRNAとドットーブロット交雑実験を行ったところ, 交雑せず, 新種のrRNAの付加による修飾ではないと考えられる. また, ポリ(A)^+-RNAとの交雑の結果, RIM-C遺伝子の転写産物RNAはポリ(A)^+を持つことがわかり, 上の考えの正しいことがわかった. 2.リボゾームの修飾が新種のリボゾーム蛋白質のリボゾームへの付加である可能性を知るため, 修飾リボゾームの蛋白質を二次元のポリアクリルアミド電気泳動で分析したが, 新種の蛋白質は検出されなかった. 3.上記結果より, RIM-C遺伝子はリボソームの成分を化学的に修飾する酵素蛋白質あるいはその発現を調節するような蛋白質をコードしている可能性が高くなった. そこでRIM-C遺伝子を含むDNA領域のヌクレオチド配列を決定した. いくつか翻訳可能配列が存在し, センス鎖の決定, 転写開始点の決定などから, そのうちの1つが有力候補と考えられる. 蛋白質の最終的固定そその働きが残された問題である.
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