研究概要 |
Linker insertion 及び Site directed mutagenesis の手法を用いて, 計画的にアミノ酸配列の一部を改変したプロキモシンを, 50種以上作成した. これらが, 大腸菌内での発現により形成するinclusion body を抽出, 可溶化三次構造の再構成をし, 酸性処理によってキモシンへの活性化を行ない, 凝乳活性及びプロテアーゼ活性を測定した. その結果, 凝乳活性/プロテアーゼ活性(C/P比), opt.plt, 耐熱性等の変化したものがいくつか得られた. 例えば, 77Y→Fの変換では, 77Fは, C/P比において, 野生型の2.4倍, であった. その他, 77Wは弱い活性を持っており, C/P比は野生型の0.6倍であったが, 77I, 77V, 77Tは, どれも, 測定できる活性を有していなかった. このことにより, この部位には, 芳香環の存在が必須であることが示唆された. また, 221K→Lの変換では, opt pHが0.5低下して, pH3.5となると同時に, C/P比も下がり, 酵素の性質が, ペプシン型に近づいた. 一方, 40F→Lの変換では, 耐熱性が非常に減少した. さらに, 他の改変部位を持つ酵素に, 40Lの変異を導入すると, その改変酵素の特徴を残しながら, 熱安定性が減少した. 以上のように, アミノ酸の一次配列と酵素活性との関連についての基礎的な知見と, 実用的酵素改良の可能性が示された. また, より酵素学的性質を明らかにするために, 再構成後のプロキモシン精製のスキームを確立し, 合成ヘキサペプチドを用いた, 反応速度論的解析を行った. その結果, 77Fは, 野性型酵素に比べて, Kmが3倍, Kcatが0.1倍であり, 113Fは, Knが4.5倍, Kcatが3.5倍であった. それぞれの凝乳活性は, 77Fが野性型の0.2倍, 113Fが0.4倍であり, 酵素の反応性及び基質特異性の変化が, 明確に示された.
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