研究概要 |
本研究はC-P化合物のなかでも最も特異的のC-P-C結合を有するビアラホス(BP)を研究対象とし, その詳細な生合成機構を, 酵素を含め生物有機化合物に詳細に解明することを目的としてした. 先ず, BPの生合成中間体であるホスフィノピルビン酸からデメチルホスフィノトリシンへの骨格炭素1個が増加する反応機構の解明をおこなった. この変換過程の中間体を単得るために, 酵素阻害剤の利用を検討した. その結果, モノフルオロ酢酸の添加により, 新規C-P化合物, 2-ホスホノメチルリンゴ酸(PMM)が蓄積し, その構造を決定した. 本物質はクエン酸の末端のカルボン酸がホスフィン酸で置換された興味ある構造を有している. 次いでこの物質の絶対構造をRと決定した. 次にPMMから次の代謝産物への変換機構を解明するために, グルタミン酸生産菌を用いての変換を検討したところ, 生合成中間体であるデメチルホスフィノトリシン(グルタミン酸類縁体)に変換された. 以上の結果, BPの生合成にはTCAサイクルが深く関与していることが明かとなった. 次にこの酵素(PMMシンターゼ)の精製を試みた. Streptomyces hygroscopicusの菌体の超音波破砕液を硫安分画し, 種々のクロマトグラフィーにより, 完全に単一の蛋白にまで精製し, その反応機構等を明らかにした. その諸性状から本酵素がR型のクエン酸シンターゼと酷似していることを見出した. また, そのN末から28個までのアミノ酸配列を決定し, 既にクローニングしてあるBP生合成遺伝子との関係を確立した. 次に本化合物から次の代謝産物への反応は, TCAサイクルの酵素によることを証明した. 以上の研究によりC-P化合物であるBPの生合成における後半の詳細な反応機構を明らかにした.
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