研究概要 |
美麗な花色は主にアントシアニンであるが, 単独では不安定なアントシアニンの花弁中での安定化機構および青色の発現機構の解明を目的とし, 特に金属の関与したメタロアントシアニンについて研究した. (1)ツユクサの青色色素コンメリニンの構造 我々は天然および合成コンメリニンが電気泳動で7個のスポットに分離されることを手掛りとしてコンメリニンはマロニルアオバニン6分子, フラボコンメリン6分子, マグネシウム2原子からなる分子量的1万の分子であることを証明できた. また分子中におけるそれらの成分の配列に関しては結晶形, 旋光分散などのデータから, マロニルアオバニン2分子が疎水結合でスタッキングしたもの3組が2原子のマグネシウムによってキレートし, プロペラ状となり, 各マロニルアオバニンにフラボコンメリン1分子ずつがさらに疎水結合でスタッキングした構造を推定した. 従来測定のできなかったコンメリニンのプロトン核磁気共鳴スペクトルの測定に成功し, その結果も上記の推定を裏付けた. (2)高度にアシル化をされたアントシアニンの構造と安定性 西洋アサガオの青色色素ヘブンリーブルー, セブリナの色毒セブリニン, 赤キャベツのジアシル化アントシアニン3種, モノアシル化アントシアニン5種の構造を確定した. このうち芳香族酸2個以上をもつ色素は中性附近の液中で安定であるが, 1個以下のアントシアニンは不安定で容易に脱色する. この現象は我々のサンドイッチ型スタッキングによる安定化の説を裏付ける. (3)ヤグルマギク青色色素プロトシアニンの構造 この色素はスクシニルジアニン6分子, マロニルフラボン6分子, マグネシウムと鉄各1原子からなるメタロアントシアニンであろうと推定した.
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