研究概要 |
紙は木材繊維構造単位に基づく不均一性を本質的に包蔵しているから, 紙をフィルムの様な均質な平面材材として取り扱うことはできない. インキなどの記録材料がパルプ繊維の親水性に基づく毛細管力, あるいはファン・デル・ワールス力によって, 上記各種の印字方式の下で紙に高速で転移する場合, パルプ繊維或はそのフィブリルなど, 紙の構成単位が形成する表面の平滑性, シートの多孔性は大きな影響をもっている. 本研究では以上の前提に立脚して, (1)紙の高速ぬれを特に考案した微小時間接触角測定装置を用いて測定し, (2)精密3次元粗さ測定装置により紙表面の凹凸を視覚的に判断すると共に, これを用いて表面の粗さ体積を精密に計測し, 以下の様な結果を得た. (1)金属蒸着を用いた観察では紙の表面粗さは紙表面の液体の接触角には影響しない. (2)紙表面にセルロース分子フィブリルの存在を仮定すると液体の挙動がよく説明される. (3)臨界表面張力γ. を求めたところ, 静電複写におけるトナー付着, 定着性と良い相関が認められた. (4)粗さ測定器より求めた紙表面の凹部の総体積としての粗さと, 紙の動的吸液性測定器であるBristow試験機によるぬれの遅れによる紙の凹部容積を比較し, 本法がより合理的であることを認めた. (5)またドット・プリンタ, 熱転写・プリンタ, インキ・ジェット・プリンタなど各種プリンタの印字面積をデジタイザ, イメージ・アナライザで測定し, インキなどの記録材料の紙への転移性を定量的に測定し, 紙の表面粗さとの関係を明らかにした.
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