研究概要 |
本研究は, 解凍魚の流通過程における品質劣化の実体を明らかにするために, 解凍魚の組織内酵素の活性, 微生物の生態, 並びに脂質, タン白質, エキス分など諸成分の変化を調べたものである. -20°, -30°, -40°及び-50°Cに貯蔵した冷凍魚を解凍して0°に再貯蔵したときのシエルフライフを官能検査で調べたところ, 凍蔵温度に関係なく, 対照試料(非凍結, 0°C冷蔵魚)との間には臭気に著しい違いがみられた. また細菌フローラはいずれもPsI/II群が圧倒的多数を占め, 対照とはかなり差異のあることが分かった. 海産魚フローラの各菌群細菌について上記凍結温度における生残率を比較したところ, 大半の菌群で貯蔵温度が低い程生残率の高い傾向がみられた. また菌群間の生残率を比較すると, MicyococcusとFlavobacteriumが最も高く, ついでMoraxella, PsI/II, III/IV-Hの順であった(奥積). 筋肉細胞の凍結損傷の度合を調べるために, β-N-アセチルグルコサミニダーゼを指標酵素として, サバ肉, イセエビ, ホタテで検討したが, 本酵素は適格でないという事が分かった. また筋肉内ヒポキサンチン生成系酵素の活性について比較検討した(永山). -20°凍結のマイワシを解凍して5°Cに再貯蔵したときのK値, TBA値, 脂質組成などの変化を調べたところ, K値からみた鮮度保持時間は対照(非凍結 5°C貯蔵魚)に比べて若干短かかった. また解凍魚の方が脂質の加水分解の進行が速かった(小泉). 上記と同様に解凍マイワシを水氷に再貯蔵してTMA, 遊離アミノ酸, クレアチン, ヒスチジンなど非タン白態窒素の消長を調べたところ, 解凍時及び氷蔵中に生成したドリップの流出により, エキス成分の損失がみられた. また, 遊離アミノ酸ではヒスチジンの減少が目立ったが, 他のアミノ酸やや増加の傾向を示した. また, ATPの分解では, 解凍魚の方が対照より速く, 多量のヒポキサンチンの生成がみられた(平野).
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