研究概要 |
本研究は担子菌から神経伝達物質のレセプターに作用する化合物あるいは酵素阻害活性物質を単離することを目的として行ったもので, これまでに以下のような結果が得られた. 1.ヒカゲシビレタケ(Psilocybe argentipes)による幻覚発現が, 脳シナプスの主要な伝達物質であるセロトニンと構造が類似でセロトニンレセプターに作用すると考えられているpsilocybinによるものであることを明らかにした. またアイゾメシバフタケ(P.subcaerulipes), センボンサイギョウガサ(P.subbalteatus)等にもpsilocybinが含まれているこ を明らかにした. 2.有毒担子菌の一種, ニセクロハツ(Russla subnigricans HONGO)から興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸のアンタゴニストとして知られているL-(-)-bailciainとともに新アミノ酸(2S, 3R)-(-)-3-hydroxybaikiainを単離した. またデングタケ(Amanita)属のA.abruptaおよびA.virgineoides Basからそれぞれ新アミノ酸(2S, 4Z)-2-amino-5-chloro-6-hydroxy-4-hexenoic acidとcyclopropylalanineを単離した. さらにツチカブリ(Lactarius piperatsu)からも新アミノ酸(2S-3′S)-1-(3-amino-3-carboxypropy1)-5-oxo-2-pyrrolidinecarboxylic acidを単離した. これらの新アミノ酸類は構造から考えて神経伝達物質のレセプターに対する作用あるいはアミノ酸代謝酵素阻害活性が期待される. 3.担子菌類のアミノ酸画分についてグリタミンミンテターゼ(GS)阻害活性をスクリーニングし, ドクササゴ(Clitocybe acromelorge)から活性物質としてcytidine-5′-diphosphateを単離した. 4.合成したアミノ酸のうち, 4-N-hydroxy-L-2, 4-diaminobutyric acidに強力なGS阻害活性が認められたことから, ヒドロキシアミノ基が酵素反応においてカルボン酸アナログとしても機能することが明らかとなった. 5.神経生理学上重要なβ-ヒドロキシグルタミン酸および関連化合物の合成方法としてビニルグリシンとニトリルオキシドとの1.3-dipolar cycloaditionが有用であることを明らかにした.
|