研究概要 |
高分子材料の表面変性によって材料本体にない機能を寄与する技術は, 化学的又は物理的方法で試みられているが, プラズマ化学的方法は低圧グロー放電によって生成する活性種を材料に接触させ, 材料本体の損傷なく有効な表面処理を行う特長がある. 1.酸素プラズマの応用:酸素プラズマは強力な酸化作用を有し, 材料表面に酸素極性基を生成して親水性, 接着性を向上させるが, 極性基の化学分析の結果アルキル鎖にはカルボニル基とエポキシ基を生成し, 水酸基やカルボキシル基は認められなかった. プラズマ粒子中には高エネルギーの電子やイオンが存在するが, これを金網を用いて電界遮へいし, 原子状酸素のみの酸化を行うと酸化は一層緩やかとなり, 従来のプラズマ酸化はエネルギー粒子の表面衝撃作用を含んでいたことが分かった. 酸素プラズマによる有機材料の灰化技術にこの方法が取り入れられ, 塩化物, 匕素の定量に応用された. 2.窒素プラズマの応用:窒素は不活性ガスと見られているが, 原子状窒素は高い活性を有する. 高分子表面に窒素プラズマを作用させるとアミノ基など生体適合性の高い官能基を生じることが期待される. 化学分析の結果第一アミンと第二アミンが主体と分かったが, 後者の方が前者の2倍くらい密度が高かった. 何れにしても生体適合性の向上に有効な手段と考えられる. 3.プラズマコーティングの応用:有機モノマーのグロー放電によって, 放電空間中に入れた個体材料表面に超薄重合膜を形成することができる. アンモニアセンサーに用いる多孔性膜にテトラフルオロエチレン重合膜をコーティングすると, 有機アミン共存下のアンモニアに対する選択性が著しく向上した. 又多孔性膜にグルコース酸化酵素や尿素分解酵素を含浸し, 両面からプロパギルアルコール重合膜をコーティングしたものはグルコース及び尿素センサー膜として機能できる.
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