研究概要 |
易燃性の繊維製品を難燃化することにより, 引火を抑制し火災防止に導くことを目的として検討したところ, 以下の結果が得られた. (1)火災の主原因である寝たばこを想定して, 模擬たばこを試作し, 実際のたばこ火におけるわたの燃焼挙動を比較したところ, よい一致がみられ, たばこ1本の燃焼熱は16.7KTであった. (2)熱の伝播速度は横方向が最も速く, 下方向が遅いが, 蓄熱量は横方向が最も小さく, 下方向が最も大きいことが認められた. ポリエステル(PET)わたおよび防災加工わたでは, 熱の伝達, 熱量がかなり抑制され効果があるが, 側布, わた両者を加工した方がより効果が高い. (3)防災性能の評価は一種の試験桟のみでは信頼度が低く, 酸素指数法, 垂直法, マッシュルーム法および着火時間などの燃焼試験法で検討しその相関をみた. その結果, 溶融して火滴着火する危険の大きい難燃合成繊維布は炎が拡がらないため, 熱伝導速度が小さく他の試験結果と一致しない傾向を示したことは問題であると思われる. (4)引火点・発火点測定装置により各試料の引火点を測定すると, 芳香族ポリアミド系と毛は少なくとも600°Cまで引火しなかった. 防災加工試料は未加工試料より引火点が低くなる傾向が示され, 熱分解温度の低下を反映している. (5)燃焼熱は, わたの場合燃焼段階が進むほど, 炭化が進むほど, 燃焼熱が高くなる傾向がある. PETの燃焼熱の測定は難かしく, 少量の試料を顔皮紙で包み, 安息香酸を併用させることによりはじめて測定可能となった. 燃焼熱はセルロース繊維は加工により低下するが, 合成繊維系はかなり高い燃焼熱を示し, 防火加工しても燃焼熱は高い傾向にあった. 今回測定した引火点, 燃焼熱の情報は, 今までの研究の成果をさらに有利に導くものである.
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