研究概要 |
核酸代謝やエネルギー代謝に関与している酵素, あるいは生体内における情報伝達に関連するタンパク質リン酸化酵素やGTP結合タンパク質などは, いずれもヌクレオチド結合部位をもつタンパク質である. これらのタンパク質の機能を分子レベルで解析するために, 本研究ではヌクレオチド結合部位に特異的な新しい親和標識剤を開発することを試みた. 反応基としてアミノ基に特異的なピリドキサールを選び, その5′位に親和基としてヌクレオチドポリリン酸を縮合させた化合物, すなわち, ヌクレオチドポリリン酸ピリドキサールを合成し, ヌクレオチド結合部位をもつ種々のタンパク質に適用した. 試薬の種類としては, アデニン環またはグアニン環をもち, リン酸基数を2〜4に変えることにより, 反応基と親和基の距離を変えた. これまでに適用したタンパク質としては, ウサギ筋肉乳酸脱水素酵素, ウサギ筋肉アデニレートキナーゼ, 大腸菌F1-ATPase, ウサギ筋小胞体Ca^<2+>-ATPase, ウサギ筋肉ホスホリラーゼキナーゼ, Ha-ras発ガン遺伝子産物p21などであった. ヌクレオチドポリリン酸ピリドキサールはこれらすべてこのタンパク質のヌクレオチド結合部位に結合し, 急速な失活を引きおこした. また, 修飾タンパク質の構造解析から標識部位のリジン残基を同定することができた. それらの結果から, これらの化合物がヌクレオチド結合部位に特異的な優れた親和標識剤であることが確かめられた. また, リン酸基の数の異なる標識剤を用いて, タンパク質に対する反応性の差を調べることにより, 標識部位の構造的特徴をある程予測することが可能になった.
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