研究概要 |
好熱性ラン藻シネコユッカスから調製した系II標品を用い次の成果を得た. 1.各種系II標品についてプラストキノン含量と吸光度変化を測定した. 酸素発生標品はプラストキノンプールを欠いているが, Q_AおよびQ_Bとして, 働く2分子の他に作用不明の1分子のプラストキノンを持つ. 純化した酸素発生複合体ではQ_Bが失われていることが見出された. 2.アジド誘導体を用いたフォトアフィニティラベリングを行い, フェノール性除草剤がQ_B蛋白質に, プラストキノンが47KDa蛋白質に結合することを見出した. 3.酸素発生標品による5種類のベンゾキノン還元反応を解析し, 還元速度は分子の疎水性が高いほど速くなること, DCMOにより阻害されないがDMIBにより拮抗的に阻害されることを見出した. また内光によって誘起されるQ_AとQ_Bの吸収変化を調べ, Q_A^-とQ_B^-からのジクロロベンゾキノンへの電子移動は非常に遅いことを確かめた. これらの結果からベンゾキノンはQ_B部位に結合してQ_Aにより直接還元されることが明らかとなった. その温度依存性を調べ, アーレニウスプロットで19°Cに屈曲点を示し, それより高温域で低い活性化エネルギーを持つことが見出された. これは19°CにおいてQ_B結合蛋白質の構造変化が起きてきることを強く示唆する. 4.系Iの電子供与体とされていたジュロキノールの酸化もDBMIBで拮抗的に阻害されることが見出された. したがってキノールはチトクロームb・f複合体のプラストキノン結合部位で酸化され, DBMIBは系IIのQ_B部位と同じ機構でこの酸化を阻害することが示された. 5.チラコイド膜をペプタンだ抽出すると系I反応中心複合体に結合している2分子のビタミンK_1の50%が失われることが分った. しかしP430の光還元反応は阻害されないので抽出された1分子のビタミンK_1は初期の光化学反応に関与しないことが確かめられた.
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