研究概要 |
光合成生物は光エネルギーが過剰な条件になると光障害をうける. 本研究ではどのような条件で光障害が生じやすいか, 最初に損傷をうける分子が何であるか, どのような分子機構で損傷をうけるかを明らかにしょうとした. 1.光障害条件:同じ光照射でも酵素のない条件下で最も光障害が生じやすく, 酸素分子も電子供与体として機能し, 光障害を防御していることを明らかにした. 2.損傷分子の同定:嫌気条件下の光照射でも光化学系II反応中心が第一に失活し, この時は活性酵素が関与しないので励起3重項色素分子が作用分子となって光化学系II反応中心蛋白質に損傷を与えることを指摘した. 3.光化学系II反応中心D1, D_2蛋白質の単離, 定量法:D1蛋白質がリジン残基を含まないことを利用し, リシルエンドペプチダーゼを用いてD1蛋白質を単離する方法を確立した. D_2蛋白質も同様の方法で処理しC末, N末の一部とれた28KDa断片として単離した. この原理に上ってHPLC, またはSDS-PAGEを用い両蛋白質を同時に分離, 定量する方法を確立した. 4.光障害時のD_1, D_2蛋白質含量:系IIが光障害をうけているとき, D1, D2蛋白質はほとんど分子量に変化がなかった. このことは光で生じた活性分子は蛋白質分子に損傷を与えるが, ペプチド結合は切断されないことを示している. 5.光化学系IIの構造と反応:マンガン結合に関与する分子サイズを決定し, また, 過酸化水素の光酸化機構を明らかにした. 6.活性酸素の生成, 消去:アスコルビン酸ペルオキシダーゼを精製し, この分子的性質を明らかにし, ホウレンソウCuZn-スーパーオキシドジスムターゼのアミノ酸配列を決定した葉緑体での活性酸素生成, 消去に関する総説をまとめた.
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