研究概要 |
高等植物細胞の分裂, 分化の過程には細胞骨格系の機能が重要なポイントとなる. しかしながら現時点で研究対象となっているのは微小管系とアクチン系であるが, それらでさえも市販の抗体または抗アクチン剤であるファロイジンを用いた蛍光法による顕微鏡観察の域を脱しない. 私は, この様な状況から一歩ふみ込んだ細胞骨格系を構成するタンパク分子の性質や機能を理解するところから本研究をスタートさせた. 高等植物細胞には微小管系, あくちん系の他に新しい系が多数存在する事が明らかとなり, これらが特有の調節をしながら相互に役割りを分担していると考えられる. 以下に本研究で明らかとなった細胞骨格要素と調節機構について述べる. 1)微小管系におけるminor subunit様タンパクは細胞のageの進行に伴って出現し, 重合阻害, 脱重合という新らしい調節機構を形成している. また核の表層には, MTOC様物質が存在し, 重合中心を決定しているようであるが, 核より分離できる事を初めて示した. 2)アクチン系についての生化学的研究は皆無であったが, in vitroで重合能を有するアクチンが分離できたので今後に期待される. 3)新らしい細胞骨格系が三種類発見された. (ア)50Kdタンパクは塩基性であるが, GTP, GMP等の存在下で太さ12〜1.5nmのフィラメントを形成する. 抗体を用いた研究では細胞のstageにより存在部位が変化し, 核の近辺, 細胞表層, フラグモプラスト等に分布している. (イ)68Kdタンパクは, ヌクレオチド存在下で重合し, 3〜5nmのフィラメントが集合した束を形成する. 核表面から1〜数本の束が細胞膜に向って伸びており, 核の移動に重要であると思われる. (ウ)100Kdタンパクは低塩濃度で重合し, 二重鎖フィラメントを形成する. 抗体を用いた研究では, 細胞軸に平行に存在し独特のパターンを形成している. stageによりその分布に変化が見られる.
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