研究概要 |
生物的, 非生物的環境ストレスに対する植物の防御機構を究明することを目的として, 浮稲の水浸下での節間伸長, 傷害および病害抵抗性に対する物理的刺激処理の効果, 芽生えの定着に重要な双子葉植物のフツク形成, ウリ科植物のペグ形式,並びに重力屈性における重力刺激の作用機措を研究した. ジベレリン欠乏の突然変異種のイネ短銀坊主と浮稲のAswindの交雑実験, その後代を用いた実験により, F_1植物の水浸下における節間伸長性は不完全優性であり, この節間伸長能力には補足遺伝子が関与し, 一つはジベレリン生成を支配し(B/b), 他の一つはエチレンに対する反応性を支配している(A/a)という仮説が成立した. 物理的刺激処理はインゲン植物の茎の伸長生長を制御に, 逆にその肥大生長を促進すると同時に, トマト圧色疫病菌の感染を著しく抑制した. また, 物理的刺激処理は, 傷害に反応して形成される, 癒傷カルスの発達を著しく助長し, それが生体内サイトカイニン量の変化に関係するものであることが示唆された. ウリ科植物芽生えのペグ形成には, 下胚軸基部における重力によって誘起されるオーキシンの局所的な蓄積が直接的に作用するが, この場合, オーキシンの不均等分布によって誘発されるエチレン生成の増大も同時に重要な作用を有していることが明らかになった. 重力屈性を示さないエンドウの突然変異種ageotropumでは, エチレン生成能が著しく小さく. またオーキシンの向基的な極性移動は正常であるが, 重力に反応したオーキシンの不均等分布(横移動)がみられていことが明らかになり. これが本突然変異種で重力屈性と同時にフツク形成もみられない主要因と考えられた. これはまた, オーキシンの不均等分布による局所的なエチレン生成の増大が重力屈性に何らかの役割を演じ, さらに, フツク形成も重力の支配を強く受けるという考え方を支持している.
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