研究概要 |
干拓地域における水生雑草の発生と繁殖機構に関する研究の一環として, 水の富栄養化に伴い発生が認められる水生雑草ホテイアオイについて, その発生実態と栄養繁殖の機構を明らかにするため, 固体群の生長に及ぼす間引きの影響並びに本草の親株及び子株間の生長関係について調べた. その結果固体密度が高くなるほど, ラミート形成が抑制され, 形成される葉柄は細長くなることが確認された. また, 実験開始以降に形成されたラミートすべてを除去した場合のホテイアオイは, 間引き直後から極めて規則的にラミート形成を行うことも判明した. つぎに, 本草の4葉期以下の段階で親株より切除された場合, 葉令の進行が著しく抑制され, 葉令5以下で親株より切除されたラミートは, 切除以後の重量増加が抑えられた. これらのことより, 葉令5〜6以下の子株は親株への依存性が強く, その依存性は葉令が低いものほど強いこと, また葉令6以上の子株は親株に対する依存性は弱いことを明らかにした. つぎに, ホテイアオイの耐塩性や適応などについて検討し, 本草の塩類による生育の低下は, 培地の浸透圧より, むしろNaの過剰吸収によるものとした. また, 広塩性単子葉類の水生雑草で, 水辺環境の保護に利用できるヨシの耐塩性機構について究明した結果, ヨシは生育は抑制されるが, 双子葉類の塩生植物と異なり, 葉身のNa濃度は低く, K濃度は高く維持されており, 耐塩性の大きいことが明らかとなった. また, Naの排除機構について放射性同位元素で調べた結果, 本草はエネルギーを使って根へのNaの流入を抑えたり, 取り込んだNaを根から排出したりすること, 地上部に集積したNaを篩管を経由して根へ再転流し, 排出したり, 体内に入ったNaが葉身に到達する前に根や茎の部分にためて葉身への輸送量を抑えることなどを明らかにした. 以上の結果は, 干拓地域の塩分濃度変化に伴う植生の変化を考察する上で, その意義は大きい.
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