研究概要 |
作物の生産力は, 遺伝的要素を始め, 種々の栽培および環境要因によって支配されており, その総合結果が生産量として規制される. サトイモの生育に関する資料は乏しく, 収量も他のイモ類に比して低位である. そこで, 環境要因, とくに日長, 土壌水分および土壌温度と生育反応について, 生理・生態面から把握し, 物質生産向上のための環境資料を得る目的で実験を行った. 1.主茎葉の出葉速度は, 短日条件で生育の後半に早くなり, 土壌水分の減少や土壌温度の高, 冷温で遅くなる. 出葉枚数は, 短日条件でやや多くなる. 2.同一葉位における葉位別葉面積と葉柄長との間には, 何れの場合にも高い正の相関関係がみられる. 葉面積, 葉柄長は長日条件下で大となり, 短日, 土壌の乾燥, 湿潤および高温, 冷温の条件下で小となる. 3.葉身の寿命は, 一般的には40〜50日程度であるが, 上位数枚は55〜80日と長くなる. この寿命は, 短日および土壌の高, 冷温条件では短くなる. 4.温度に対する光合成反応は, 適気温として22〜25°C, 適地温として20〜30°Cの範囲にみられた. また, 温度係数は壮葉で2.05, 老化葉で1.62であった. 5.土壌含水量によって葉面積が異なり, そこでの光合成量は葉面積に追随し, 光合成速度は葉身窒素濃度に追随する傾向がみられた. 6.乾物生産は, 葉身, 葉柄の地上部器官の増大が先行し, ついで根, さらに塊茎の地下部器官が増大する. 7月中旬より分球の着生・肥大に伴いイモの乾物割合が大となり, 生育後期にはイモへの乾物分配率が著しく大となる. 7.乾物生産に好適な土壌含水量(圃場容水量)は, 地上部での60%に対し地下部では80%となり, その水分域が異なった. 8.土壌温度も生育に影響し, 高温では初期に一時的に生育が促進するがやがて停滞し, 冷地温では終始生育は遅延する.
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