研究概要 |
ニホンナシの葉芽または茎頂由来の組織培養系における花芽形成について研究した. 花芽分化前の茎頂組織を用いても花蕾の着生がみられることから花芽形成は培養中に起ったものと考えられる. 着蕾は外植体の節の増加速度と密接に関係し, 中間的な範囲の節数をもつ個体に多く認められた. この組織培養系における花蕾着生の多少は品種の花芽形成能力をよく反映することから, 品種間の形成能力の違いは芽固有の遺伝的性質によるところが大きいものと思われた. また, この系によって形成能力の大きい系統を早期に選抜し, 育種年限の短縮を図ることが可能と考えられる. 組織培養系の花蕾着生に関係するいくつかの要因を明らかにした. 内的要因としては, ニホンナシの内生ジベレリンのうち, A4のみが花蕾誘導を抑制し, 生長抑制物質のうち, S-07(S-3307)の誘導促進効果が顕著であった. 外的要因としては, 日長はほとんど影響はなく, 温度の影響が大きかった. S-07はCCCやB-9に比して低濃度で花蕾着生を促し, 圃場試験の結果とも一致することから, 花成促進物質のスクリーニングにこの系を利用することができるものと思われる. 果樹は種子から生育した場合, 一定期間花芽を着けない未熟相を経過する. その短縮は育種上きわめて重要である. 未熟相にある実生由来の外植体は花芽着生がみられないだけでなく節間長が大きいという形態的特徴がある. 品種由来の外植体でも継代培養した組織を用いると節間長が大きくなり, 花蕾着生率が減少し, 若返りを生じることが明らかであった. ジベレリン及び抑制物質はそれぞれ外植体の節間長に影響することから, この面からの研究を深めることによって未熟相の解明に糸口を見出しうると考えられる.
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