研究概要 |
本研究は, 新しいタイプの植物ウイルスグループであるイネ縞葉枯群ウイルスの増殖機構の解明を目的に開始されたのであるが, イネ縞葉枯ウイルスやイネグラッシースタントウイルスが, その細長い粒子の上に高いRNAポリメラーゼ活性をともなっていたのである. ウイルス学的には, 被膜をもつ球状のネガティブストランドウイルスか二重鎖RNAウイルスでみられる性質であり, 糸状粒子のウイルスでは, 初めての例である. イネ縞葉枯ウイルスとグラッシースタントウイルスで見出されたRNAポリメラーゼは, 共通した特性をもっており, 試験管内においては, Mg^+, Mn^<++>, Fe^<++>により活性化されるが, 一価イオン(Na^+, K^+)は, むし3阻害的であった. また最適温度が各々40°Cと45°Cと高い. これらRNAポリメラーゼで合成される産物の分析では, 各ウイルスに含まれるRNA種と同じサイズの単鎖のRNAとその二重鎖のRNAであった. また両ウイルスともに, 外被蛋白のほかに, 23OKの微量蛋白成分が認められ, これがRNAポリメラーゼであると考えられた. イネ縞葉枯ウイルスに対する抗体は, 外被蛋白とは反応せず, またグラッシースタントウイルスの23OK蛋白とも血清学的に異なることが示された. イネ縞葉枯ウイルスには, 単鎖の4種のRNAのほかに二重鎖のRNAが含まれていることが分かり, 本ウイルスのRNAの複製は非常に特殊なものであることが示された. 本研究では, 単鎖RNAと二重鎖RNAにいて, ノーザンブロット法により, これら分子種間の関係を調べ, 単鎖RNAは各々個有の塩基配列をもっていること, 二重鎖RNAは, 各サイズの単鎖RNAと同じ配列をもっていることを明らかにした. 新ウイルス群ウイルス増殖の解明は, 現在研究継続中のものもあるが, 本研究で大きな進展をみることが出来た.
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