研究概要 |
昭和60年に長野市地附山で発生した地すべりについてサンプルを採取して土質試験を実施し, その結果と地形より佐々の提案する改良そりモデルを用いて移動距離の推定を行った. その結果, 昭和61年度に実施した御岳大崩壊の流動と同じく, その移動距離の予測が可能との結論を得た. そこで, 次のステップとして, 移動土塊が面的にどのように拡散するかを調べるために, 洪水氾濫の予測に用いられているシミュレーションと同様な手法を確立することにした. 地すべり土塊の場合, 水と異なり材料と含水状態によって, 液体のような拡散しやすくなる場合もあるが, 逆にほとんど拡散せずにそのままの形で移動する場合もある. そこで, この性質をシミュレーションに取入れるために, 地すべり土塊の運動時の内部マサツ角と間ゲキ水圧によって決流される水平土圧係数をパラメターとして導入した. この値は液体では1.0, 固体では0, 一般の土ではこの中間になる. このパラメターと改良そりモデルで用いた地すべり土塊底面でのみかけのマサツ角の二つによって, どこまで動くか? どれだけ拡散するか? の二つが表現できるようになった. そこで, まず第一には仮想上の単純斜面においてシミュレーションを行い, 崩壊土塊の含水状態と土塊がすべり落ちる斜面の含水状態を変化させ, 土塊の運動距離, 運動範囲がどのように変化するかを調べ, 妥当な結果を得た. ついで, 昭和59年の御岳山の大崩壊9km以上にわたる流動についてこの方法を適用した. その結果, 御岳山の崩壊土塊が対岸の小三笠山へ乗り上げた状況, 伝上川の急カーブの所で尾根を乗り越えて濁川へ流入した状況, および, 王滝本川へ流入して約40kmの厚さで堆積して川を塞止めた状況等がシミュレーションで再現でき, この方法が地すべり及びマサツ抵抗を主とする土石流の災害危険地図作成手法として有効であることがわかった.
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