研究概要 |
本研究は魚類耳石の形成成長の様相及び有機基質の分泌活性の局在部位とその周期性と微形態的に検討する目的で行われ, 大要以下の成果を得た. 1.メダカ胚における耳石の発生過程を追跡した. 耳石原基は2日胚の耳胞の予定感覚斑域に近接する径約1μmの小球の集合として出現する. 小球の起源は未分化の感覚斑上皮細胞の出芽分離である. 小球は周囲に微細繊維を付加して癒合し, 3日胚では1つの耳石核となる. 以後の成長は耳胞壁構成細胞の微絨毛先端の膨出による胞状体から形成される繊維の付加によることが観察された. 2.ティラピア稚魚の小嚢組織の微細構造を耳石成長との関連で観察した. 感覚斑支持細胞には細胞表面の離出分泌像が, 感覚斑から偏平上皮への移行部の上皮細胞には微絨毛先端の膨出分泌像が夫々顕著に認められた. 位置的に感覚斑は耳石膜のゼラチン層に, 移行部上皮は耳石膜網状構造に対応していた. 網状構造を構成する繊維は耳石基質に取り込まれる像が観察されたことから, 基質を分泌する細胞は微絨毛を有する移行部の細胞であらうと推定された. 感覚斑支持細胞が耳石成長に関与する可能性も示唆された. 3.ティラピア耳石よりEDTA可溶性蛋白を抽出し生化学的性状を調べた. イオン交換クロマトグラフィにより分画された5画分(FI〜FV)には, PAGE, SDS-PAGEパターンから22〜185KDの多数の蛋白バンドが分離された. Ca^<2+>添加PAGE及び45Ca平衡透析法により, FIII〜FVとくにFVに強いCa結合能を認めた. アミノ酸分析により, FIII〜FVにはGlu, Aspが多く, FVにはThrも多い特徴があり, これらの画分には糖質の結合も示された. この結果から, 小嚢組織に対しPAS, アルシャンブルー染色による組織化学的観察を行い, これら陽性物質が移行部上皮細胞より分泌され, 分泌には日周性があることが示された. 今後, FVを抗原とする免疫組織化学的検討を継続して行く予定である.
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