研究概要 |
2ヶ年の研究成果を項目別に以下に示す. 1.カタクチイワシ仔魚(シラス)の生物学的特性 (1)仔魚の感覚器(眼,鼻, 側線系, 味らい, 内耳, 遊離感丘)の発達過程を各発育段階毎に組織学的に明らかにし, それと各種行動の発現との関係を明らかにした. これらは自然における仔魚の行動の理解を深めた. (2)仔魚の生存可能最低餌料密度をシオミズツボワムシで明らかにした. (3)仔魚のポイントオブノーリターン(PNR)が1〜1.5日であることは明らかにした. つまり摂餌開始期の仔魚は1〜1.5日飢餓にさらされると以後餌にありついても生き残ることは出来ない. (4)日本沿岸に普通に出現する2種の鞭毛藻が仔魚の生残に補助的役割をすることを証明した. (5)組織学的手法による仔魚の飢餓状態判定法を確立した. これにより天然における仔魚の死亡率推定の道がひらかれた. (6)ノープリウスのサイズ組成が仔魚の生存に大きな影響をもつことを示した. 仔魚の餌料環境判定にはノープリウス密度の測定だけでは, 十分でない. (7)カタクチシラスの耳石日周輪は成長速度とよい対応を示す. (8)天然仔魚の食性をその形態変化と関連づけて明らかにした. 2.マイワシ仔魚(マシラス)の生物学的特性 (1)仔魚の耳石輪紋は1日1本形成されることを証明した. (2)マシラスの食性を発達段階毎に形態変化と関連づけて明らかにした. 3.カタクチイワシ親魚を海から離れた実験室内で循環水槽により飼育し約6ヶ月にわたり毎日産卵させることに成功した. 4.シラスの生物学的特性に関するシンポジウムを開催し, この研究分野の展望および問題点の抽出を行った.
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