研究概要 |
細菌等の感染に対する魚の初期防御の機序を解明することを目的とし, とくに補体および好中球の機能を中心に検討した. 補体の代替経路を活性化させたウナギ血清(処理血清)の好中球遊走活性をボイデン法で調べたところ処理血清は未処理血清より有意に高い活性が認められた. 処理血清をウナギに腹腔内注射したところ腹腔内への遊走細胞の浸潤と血液中の好中球の増加が起こった. また, 新鮮血清と混合ののち再分離した菌体(処理菌体)に対する好中球の貧食能を化学発光(CL)によって調べたところ, 処理菌体は対照と比べ有意に好中球に取込まれ, オプソニン作用が認められた. このように, ウナギ補体には食細胞の働きを助ける種々の働きのあることを明らかになった. 処理血清は腹腔内注射し, 血液中の好中球数を経時的に測定したところ, そのピークは接種6〜9時間後であった. 一方, 菌体あるいはその抽出物を接種した場合は接種12〜18時間後にピークがあり, それらの高さは前者の2〜3倍であった. 菌体を接種したウナギの血液を密度勾配法で分画したところ, 対照魚, 処理血清接種魚, カゼイン接種魚には認められず, 形態的にもやや大型でPASに強く染るなどの特徴をもつ比重の大きい好中球が分画された. 魚種による機能の差を知るため, コイについて実験を行なったところ, 異物接種による好中球の変動はウナギの場合とほぼ同様のじパターンを示した. しかし, コイ好中球の分離はウナギとは異なる方法を必要とした. コイ好中球の食菌能はウナギと比べると多くの点で劣っており, 例えば食菌の速さではウナギ好中球の10分間の食菌率あるいは食菌指数に達するのに2〜3時間を要した. CL反応による食菌能測定でも, コイはウナギの1/5〜1/6であった. オプソニン作用をCL反応によって測定してところコイ新鮮血清にも顕著な作用が認められた.
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